地方自治体国際交流最前線1  ~大連・神奈川経済貿易事務所~

令和7年8月20日
本年7月、当事務所でインターンシップ中の亜細亜大学の学生は、各地方自治体大連事務所計4か所を訪問し、インタビューを行いました。その内容と自治体の情報を計4回に分けて紹介します。第一回は、大連・神奈川経済貿易事務所です。

大連・神奈川経済貿易事務所 -西野翔副所長インタビュー-

西野副所長(右)

西野副所長(左)
(設立の背景)
大連・神奈川経済貿易事務所(以下、大連事務所)は1990年に設立されました。これまで35年以上にわたり、神奈川県と遼寧省との交流の橋渡しをしています。1983年、神奈川県と遼寧省の友好提携を契機に事務所が設立され、それ以来多くの神奈川県内企業が大連をはじめとする中国各地に工場や現地法人を設立してきました。これまで5年毎に神奈川県と遼寧省との間で官民による相互訪問が行われており、直近では2023年10月に県内企業や県庁職員によるミッション団が遼寧省を訪問しました。
 
(活動内容)
大連事務所の主な役割は、(1)県内中小企業の中国進出に対する支援、(2)中国企業による神奈川県への投資や事業展開の支援、(3)神奈川県の魅力発信とインバウンド促進の3つです。特に、海外進出の経験が少ない中小企業にとっては現地企業との接点を持つこと自体が大きなハードルとなることが多いため、大連事務所が果たす役割は大きいと感じます。
特徴的なプロジェクトとしては、「神奈川県企業会」と「展示会出展支援」が挙げられます。「神奈川県企業会」は2015年以降、定期的に開催していますが、中国国内に進出している県内企業同士が互いにネットワークを構築したり、中国に拠点を持つ他の県内企業を訪問する良い機会となっています。単独では難しい中国企業との接点を創出し、支援につなげるのが目的です。
また、「展示会出展支援」は、県内中小企業の中国国内展示会への出展を支援するものです。神奈川県ブースの設置や現地バイヤーとの商談機会を創出することで、販路拡大を後押ししています。
コロナ禍では、オンラインでの支援やECサイトを活用した県産品のPRなど、新たなビジネス支援の形態も生まれましたが、ビジネスを成功させるには「変化に適応する柔軟性と多様性」が重要ですので、常に街の様子や中国市場のトレンドにアンテナを張り、現地消費者のニーズを把握して、日本側にフィードバックすることを心がけています。長年、大連事務所が培ってきたネットワークと信頼関係も活かしながら、県内企業のニーズに応えるべく、例えば中国市場のトレンド調査、県内企業の製品の中国市場での評価調査に加え、初めて海外展開を検討する企業にはバイヤーの紹介なども行っています。
一方で、国際交流の難しさとして、日中間の商習慣や文化の違いがあります。例えば、日本では事前に詳細な打合わせを行い一度決めたら変更は生じにくいのに対し、中国では直前の打合わせと変更が多く、これら課題を乗り越えるには相互理解と柔軟な対応が重要です。中国側からの質問を予想し前もって資料を提供するなど、直前の変更が少なくなるよう工夫をしています。
 
(中国市場を見据えた今後の展望)
現在、中国において日系企業の一部に撤退傾向がみられますが、その中でも大連事務所では新たな支援ニーズの台頭に注目しています。1990年代から進出した県内企業の多くが中国政府から借り受けた土地の30年契約更新を控えており、これに伴う更新手続き支援など、新たなステージでの伴走支援が求められています。
 
(神奈川県の魅力を世界へ)
神奈川県は、日産自動車、富士通、味の素、いすゞなどに代表される工業系大企業が集積し、多様な中小企業がそれを支える「ものづくり県」です。そのような企業群を支え、世界との架け橋となるのがまさに大連事務所の役割であると考えます。

西野翔・大連・神奈川経済貿易事務所副所長(中)